ファイナルステージの模様

MVP・総務大臣賞・アプリ部門優勝
AICalendar(高田幹さん、松崎千帆さん、田部井沙樹さん)
[前橋国際大3年]
日常ヒントに初開発

3人の力を結集してもぎとったMVPだった。「AICalendar」を生み出した共愛学園前橋国際大の高田幹さん、松崎千帆さん、田部井沙樹さんは受賞が決まると互いの顔を見合わせ、喜びをかみしめた。

スマホなどで管理する従来のカレンダーアプリは日程入力が面倒だと思ったのが出発点。イベントのチラシなどをスマホのカメラ機能を使って撮影するだけで、その日程や情報が自動的にアプリのカレンダーに反映される仕組み。プレゼンテーションでは「日常の面倒くささからの解放」を強く訴えた。

3人は同じゼミ仲間で、いずれもアプリ制作は初めて。半年前にプログラミング言語を学び始め、「ほぼ初心者からのスタート」(高田さん)だった。システムにエラーが出ては作り直すの繰り返し。そのたびに3人で改善のためにとことん話し合った。「一人だったら絶対に作れなかった」(田部井さん)。

就活を控える3人は社会に必要とされ、ITを支えたいという夢を持つ。「MVPは自信になった」とし、それぞれの目標へと突き進む。

ジュニア部門優勝
チームT 狩野紬君
[太田宝泉南小4年]
観光情報、簡単に検索

ジュニア部門で優勝した「チームT」の狩野紬君(太田宝泉南小4年)は、本県の観光地図やウェブサイトなどを紹介するアプリ「Gunma I―guide」を作った。

授業で本県について調べて発表する機会があり、もっと多くの人に簡単に調べられるソフトを作りたいと思ったのがきっかけ。今年に入り、地元の太田や富岡、前橋などの観光名所を訪れ、写真や情報を集めた。

外国人観光客も意識し、英語表記やAI翻訳機能も活用。コメントも投稿できるシステムにした。

3度目の挑戦で念願の初優勝。発表時に音楽が流れないというハプニングもあったが、落ち着いて乗り越えた。「うれしかった」と素直に喜びを語った。

ゲームで遊ぶのが好きで、4年ほど前に「自分で作ってみれば」と父に勧められたのがプログラミングとの出合い。「将来はゲーム会社で多くの人が楽しめるゲームを作りたい」と夢を語った。

テクニカル部門優勝
伊佐碩恭さん
[東京大2年]
V3 4時間半の頭脳戦制す

昨年より問題の難度が上昇したテクニカル部門。伊佐碩恭(ひろたか)さん(東京大2年)が4時間半の頭脳戦を制し、3連覇を成し遂げた。

中高生や大学生ら県内外の16組30人が出場。プログラミングに関する12問が出題され、正解すると難易度に応じて1~3ポイントが与えられる。獲得ポイントの合計で順位を競った。伊佐さんは9問正解で13ポイントを獲得。「これまでより難しかった。思考力を試す良問もあり、解き応えがあった」と振り返った。

国内外の大会で上位入賞する実力者だ。今年初めには国内のトップ競技者が集まった「全国統一プログラミング王決定戦」で2位になった。「問題数をこなすだけではなく、さらに高度な数学の知識を学びたい」と意気込む。

大学ではゲノム病理学研究、孫正義育英財団の2期生としてビジネス分野にも関心を持つ。「やりたいことを探しつつ、今年は競技プログラミングで世界と戦う」と宣言。来年の国際大学対抗プログラミングコンテストに照準を合わせ、次は大学世界一の高みを目指す。

テクニカル部門
クライム賞
春眠不覚暁(福間遼太郎さん)
[東京・桐朋高2年]

高校のコンピューター部に所属。競技プログラミング歴はまだ1年で、トップと5ポイント差で次点に食い込んだ。序盤から順調に得点を積み重ねたが「結果的に差が開いた。相手は強かった」と悔しさをにじませた。「解けた時の快感が競技プログラミングの面白さ。次に出場する時は優勝したい」と語った。

<副賞:ノートパソコンLenovo ThinkPad>

ジュニア部門
コシダカ賞
ユキンコ(横堀ゆきかさん)
[群大附属中2年]

見たこともないゲームを作りたい―。その思いでできたのが顕微鏡で微生物を観察し、高得点を狙うゲーム。大好きな古生物「カンブロパキコーペ」も登場させ、ユニークな作品に仕上げた。

「好きなことをゲームで表現すると楽しい。年齢や性別は関係ない」。プログラミングの楽しさを語った。

<副賞:まねっきーぬいぐるみ、まねきねこ特別割引券、図書カード>

テクニカル部門
ジンズ賞
種子曼荼羅 (吉野匠さん、多田佳杜さん)
[N高2年、東京・渋谷教育学園渋谷高2年]

中学の同級生同士。出場を考えていた多田さんに、吉野さんが声を掛けてチームを組んだ。自信を持って臨んだが「予想外のミスがあり、解答に時間がかかった」と悔しがる。昨年のパソコン甲子園で4位だった吉野さんはこの受賞を励みに「次も入賞できるよう、技術を磨きたい」と目標を掲げた。

<副賞:JINS MEME>

ジュニア部門
アイエムエス賞
Love Moneys(金沢駿さん、黒崎笙さん、小林晴人さん)
[新島学園中3年]

足踏みに連動して画面の登場人物が走るゲームを開発した。怪盗役が逃げ、警察官役は男を捕まえようと後を追う。

3人は中学の同級生。放課後に集まり、ゲームの内容や小道具など、試行錯誤を重ねて作り上げた。「初めての本格的なゲーム制作は難しかったが楽しめた」と笑顔で話した。

<副賞:トイドローンTello>

ジュニア部門
うすい賞
りいや(吉沢莉維也君)
[玉村小4年]

パソコンのキー操作で、車の走行スピードを競うゲームを発表した。2年ほど前からプログラミング教室で学習を続けている。

整備士である父親の影響で、無類の車好き。「将来は父と同じ仕事に就くのが夢。同時にプログラミングも続け、何か社会の役に立つものを開発したい」と意気込んでいた。

<副賞:ロボティックボール「スフィロ」>

ジュニア部門
上毛新聞社賞
Team_TMK(太田知希君)
[冨岡小6年]

元素記号や分子式を楽しく覚えられるゲームを作った。パチンコの弾で元素を選び窒素などを作る。2年連続の受賞だが、「優勝したかった」。昨年の作品を踏まえ、弟の顔写真を出現させるなどユーモアを加えて会場の笑いを誘った。春から中学生となり、忙しくなるが「次こそ優勝を」と雪辱を誓った。

<副賞:レゴ(LEGO) ブースト レゴブースト クリエイティブ・ボックス>

アプリケーション部門
ソウワ・ディライト賞
Dr.スサノス(杉原正将さん、小西真広さん)
[大阪大1年、大阪市大2年]

海外で体調が悪くなった時、「熱がありますか」などの質問に答えていくと緊急度や対処方法などを教えてくれ、現地の言葉で問診票も作ってくれる。近くの病院や薬局を示す地図機能も付けた。「通信ができなくても使えるよう、アプリの完成度を高めたい」と話した。

<副賞:LEDキューブ >

アプリケーション部門
日東システム開発賞
九十九君(磯部佑太さん)
[日本工業大3年]

呼び掛けると、音声を認識した家具が自分の手元まで動いてくる仕組みを考案した。寝たきりの要介護者らが活用すれば、他人に頼らずに生活できるようになる可能性があるという。

「受賞に驚いて実感が湧かない。大勢の前でアイデアを発表する貴重な機会だった」と笑顔で振り返った。

<副賞:バルミューダ トースター>

アプリケーション部門
NHK前橋放送局賞
Dokka(古沢龍夜さん、石川浩平さん)
[群馬大3年、群馬大2年]

子どもたちにICT(情報通信技術)を教える学生団体で知り合った同じ大学の2人がチームを組んだ。個人レッスンを開きたい指導者と、学びたい生徒を引き合わせるだけでなく、最適な教室の場所も探せるアプリを制作した。「多くの人を前にしての発表に緊張したが受賞できてうれしい」と喜んだ。

<副賞:時計>

アプリケーション部門
エフエム群馬賞
賽銭アプリZINE(山下畔乃さん)
[群馬大1年]

全国の寺院の朝夕の読経をライブ配信し、視聴者は感謝や応援の意味を込めた「おさい銭」を投じることができる。一定額以上でアプリ内でデジタル御朱印をもらえる機能も持たせ、宗教とエンターテインメントを掛け合わせた。「こだわって作った。工夫を分かってもらえてよかった」と受賞を喜んだ。

<副賞:特製ボールペン>

テクニカル部門
群電賞
かぼちゃ(加賀谷光祐さん、川瀬翔大さん、上嶋諒也さん)
[前橋工科大4年]

岐阜、宮城、長野と出身地が異なる3人。前橋工科大が縁となり、受賞という形で大学最後の思い出を刻んだ。集中するチームが多い中、和気あいあいと楽しみながら臨んだ。「受賞はうれしいより正直驚いた。しっかりと役割分担を決めてチームワークを発揮できた」と笑顔で振り返った。

<副賞:SONY スマートスピーカー>

アプリケーション部門 マスターコース
奨励賞
小山博さん、伊藤義明さん
中高年 斬新アイデア

今回新設されたアプリケーション部門のマスターコース(50歳以上)には小山博さん(70)=前橋市、伊藤義明さん(52)=横浜市=の2人が出場し、ともに奨励賞を受賞した。

小山さんの発表テーマは「納豆の発酵制御システムのIoT」。納豆製造において4段階の発酵状況のデータなどを管理者にメールで送信。その情報を基に管理者は、携帯電話から工場内のパソコンにリモート接続して遠隔操作での対応が可能になる。支援先の業者での実用化を目指している。

小山さんは初参戦について「チャレンジのつもりで出場した。若い人たちと同じ場に立てて、勇気をもらい幸せな気分になれた」と満足そうだった。

一方、伊藤さんはズボンのチャックの閉め忘れを携帯電話の着信で知らせてくれるというユニークなベルトを紹介し、自ら実演して会場の笑いを誘った。これまでも数多くのプログラミング大会に出場しているが「子どもたちをはじめ、この大会のレベルの高さには驚いた」と興奮気味に振り返った。

ゲスト

八王子P

ボーカロイド「初音ミク」など、パソコンの音声合成ソフトを使った楽曲制作で人気のミュージシャン、八王子Pさんがスペシャルゲストとして登場し、会場を熱狂させた。

ボーカロイドについて解説後、曲作りを実演。ソフトを駆使して初音ミクに「ぐんまプログラミングアワード」と歌わせると、会場から拍手が起こった。7曲を披露したDJパフォーマンスでは、初音ミクの映像と観客が手にしたサイリウムの光で、会場がエレクトリックな雰囲気に包まれた。

さとう麻衣

渋川市出身のシンガー・ソングライターさとう麻衣さんは、地元愛を表現した注目曲「グンマ」など2曲を披露。力強い歌声を会場に届けた。「群馬は魅力度ランキングが低くて自虐的だけど、本当はみんな群馬のことが大好き。そんな思いをとにかく届け、共有したかった」と振り返った。

アンカンミンカン

みどり市出身のコンビ芸人「アンカンミンカン」は第1回目からの出演。しのぎを削るテクニカル会場の様子を実況した。出場者をインタビューするなど軽妙なトークで会場の笑いを誘い、「みんな最後まで諦めずに頑張るぞ」と声を掛けると出場者も「おー!」と拳を挙げ応じていた。

テクニカル部門の中継後は、大ホールでサイリウムの使い方をレクチャーし、会場を盛り上げた。

AKAGIDAN

群馬県のご当地アイドル、あかぎ団も3年連続の出場。八王子Pさんの楽曲「Carry Me Off feat. 初音ミク」とコラボレーションした特別ステージを披露した。大きなスクリーンに映し出された5人のボーカロイドとシンクロしたダンスに会場は釘づけだった。

GPA2019 MVP 中国・上海研修ツアーレポート

最先端テクノロジーを体験
共愛学園前橋国際大学 高田幹

今回は人生で初めての中国研修でした。大学に入学した頃はこのような研修に参加できるとは夢にも思っていませんでした。今回の研修では中国の中でも発展しているといえる上海で、テクノロジーの使われ方や文化の違いなど、現地に行ったからこそ学べた経験がたくさんありました。研修期間中は、中国のデジタル環境から今後日本にも起こる変化や世界のトレンド、これからのデジタル主導のビジネスの示唆をITコンサルティング会社「ビービット」の藤井保文さんに教えていただきました。


研修は座学と体験型で分かれており、主に座学で学んだ多くの情報を体験型の研修で体感し、より深い学びにするというカリキュラムでした。座学で一番印象に残ったトピックは、「中国ではモバイルペイメントが完全に普及しきっている」ことで、中国ではAPPのQRコードで支払えるキャッシュレス社会が成立しています。モバイルペイメントではアリペイとウィーチャットペイが主流であり、このような社会に変化していった裏にはさまざまな工夫がされていました。支払い手順の簡略化や公共料金の支払いが可能な点、インフラ化、企業提携、ビッグデータなどが例に挙げられます。体験型の研修ではこれらの知識を念頭に置き、実際にモバイルペイメントを使用して店頭で商品を購入したり、個人間で送金しあったり、タクシーの支払いをしました。私も滞在した5日間はほとんどスマートフォンで支払いを行い、モバイルペイメントの手軽さや便利さを体感することができました。



文化の面でも大きな違いがありました。中国ではインターネットの厳しい規制がされており、普段日本で使われているSNSやブラウザサービスがほとんど使用できません。その影響で中国独自のインターネットサービスであるウィーチャットやバイドゥなどが誕生しました。一見不便そうに思えますが、激しい競争の中で洗練されたサービスがどんどん生まれ、ユーザーが使いやすいものが勝ち残っていきます。その結果、なぜ中国には魅力的なサービスが多く存在するのか分かりました。


今回の研修では日本でまだ導入されていない、未来的な最先端テクノロジーを体験することができ、IT業界に携わろうとしている自分としては多くのことを吸収できた5日間でした。