ぐんまプログラミングアワード(GPA)の関連事業として、元総務事務次官でマルチメディア振興センター理事長の桜井俊さん(前橋市出身)が27日、同市の上毛新聞社で講演した。「データ社会の今」と題して、世界におけるデジタル分野での日本の現状や課題を語った。IT人材の育成やGPAが担う役割について、クライムの金井修社長、コシダカホールディングスの腰高理志DX推進室長との鼎談(ていだん)も行った。
日本のデジタル分野の競争力が63カ国中29位と立ち遅れている現状に、桜井さんは「データ活用の面で評価が低い」と指摘。欧米は個人情報について同意を得て活用している一方、日本では保護意識が強く、個人データの活用が進まないことが要因の一つに考えられると分析した。
対話型人工知能(AI)「チャットGPT」などが注目される中、知財保護やフェイクニュースの増幅が課題になっているとして「自分の考えに近い意見ばかり見たり、同意する人たちばかりで社会をつくると思考が偏っていく」と危機感を示した。今後の教育はテクノロジーにあふれた時代になっていくといい「ITに尖った人たちをつくっていくこと、課題解決能力を身に付けていくことが必要」と話した。
鼎談では、本県デジタル産業の展望について意見交換。金井さんは、デロイトトーマツグループやアクセンチュアといった大手企業が前橋に拠点を設けたことに触れ「群馬は災害が少なくアドバンテージが高い。世界の企業に来てもらい、群馬でIT人材が就職できる環境づくりをしたい」と意欲を語った。
腰高さんは、東京は新しいビジネスがしやすい環境が整っているとして「五反田や京都がスタートアップの場になっている。群馬もシリコンバレーをモチーフにしたエリアに育ってほしい」と期待した。桜井さんはGPAに関して「日本でも先駆的な取り組み。テクノロジーの進化を先取りして、次のステップも考えてもらいたい」と語った。
GPA協賛社対象のICT講演会として開き、関係者約20人が参加した。主催した上毛新聞社の清水直樹取締役営業本部長は「社会の要請に応え、プログラミング教育の普及、プログラミングを通じた社会課題の解決を目指して開いている」と述べた。
(平山二葉)